2015年に設立し、ホームセキュリティ×IoT領域で事業を展開するStrobo社。同社のCEOである業天亮人氏をゲストに迎え、上場した2社のIoTスタートアップ「セーフィー」「フォトシンス」について、成長可能性資料を見ながら考察します。(ネットで閲覧可能ですので、ぜひ資料を参照ください)
また2021年には、Strobo社がセキュリティカメラサービスを提供開始。なぜこのタイミングで開始したのか、Strobo社のホームセキュリティサービス「leafee(リーフィー)」の概要や現在の組織体制・採用状況もお聞きしました。
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手嶋:今回はIoTのスタートアップについて語り合いたいと思います。セーフィー、フォトシンスとIoTスタートアップの上場が続いているので、これは元祖IoT起業家を呼んで語り合おうじゃないかということで、今回はStrobo社の業天さんに来ていただきました。
2015年にIoTスタートアップを起業して、今まさに業界の最前線にいる業天さんと、セーフィーとフォトシンスのすごさを語り、後半は業天さんが代表を務めるStrobo社の構想を聞いていく流れです。業天さんと私はゆるい友人ぐらいの距離感で、ここ数年お付き合いがあるんですけど。簡単に自己紹介していただいてよろしいですか?
業天:初めまして、株式会社Strobo代表の業天と申します。Stroboは個人向けのIoT家電のスタートアップで、アプリセンサーを使った格安セキュリティサービスの「リーフィー」を提供しています。低価格のセコムやアルソックのようなサービスと言うとわかりやすいでしょうか。これまでは比較的裕福な家庭しか使えなかったホームセキュリティを、IoTの力で低価格にして、より多くの人に使ってもらおうと事業を展開しています。よろしくお願いします。
手嶋:業天さんが創業したのが2015年。LayerXの福島さんとかが大学の同級生でしたっけ?
業天:福島くんは、大学は同じ大学で一つ上です。東大起業サークルTNKの仲間ですね。
手嶋:そこで一緒だったんですね。創業の2015年はスマートフォンアプリサービスの起業が盛んな時期だったと思うんですけど、どうしてその時期にわざわざIoTのスタートアップを起業したんですか?
業天:もともと僕は2011年の大学3年生のときにIoTのベンチャーを起業してまして。スマートリモコンを提供するPlutoという会社だったんですけど、その時は全然IoTという言葉が流行っていなかったので「インターネット家電のベンチャー」と呼んでいました。
自分自身は、未来のソニーになれるような家電ベンチャーを日本から作りたいというこだわりがあって、アプリにわき見もふらずに2社とも家電ベンチャーをやっていたんですよね。
手嶋:なるほど、ソニーが原点だったわけですね。ここからはセーフィーとフォトシンス、2社の成長可能性資料を見ながら話していきます。ネットで見られるので、皆さんもぜひ見ながら読んでいただけるといいかと思います。セーフィーの資料4ページ目、設立年月が2014年ということはStroboとほぼ同期ですね。
業天:フォトシンスもそうですけど、この時期に起業したIoTのベンチャーが多いんですよね。
手嶋:この時期に何かあったんですか?
業天:セーフィーはそこまで関係ないかもしれないですが、Bluetooth Low Energyという無線通信の仕様がiPhone4Sに対応して使えるようになったのがちょうど2013~2014年。この時期に起業したIoTベンチャーが非常に多いのは、この出来事が背景にあります。
手嶋:なるほど。この時期にSo-netグループもモーションポートレートという、顔写真をアニメーション化できる面白いアプリを出していますね。使っているテクノロジーはメインの事業と共通していて、全く違う事業へとスピンアウトしたということですね。主要投資家は、事業パートナーがたくさん入っている。ここはあとでも触れますね。
7ページ目に行くと、課金カメラ台数が現在13万台弱とあり、どう伸びてきたかというグラフがあります。業天さんは、これをみて思うことはありますか?グラフの推移について。
業天:シンプルに、綺麗に伸びているなと。ただセーフィーが上場したときに、僕も含めて皆が驚いたのは、直近2020年の3Qから4Qにかけての急成長ですね。今までの時間軸で見ると目立ちづらいんですけど、ここを切り取って注目すると一気にまた伸びているので、何があったんだろうと気になりますよね。
手嶋:すごく雑に言うと、コロナの影響というか、非接触が前提になってきたとか、そういう文脈なんですかね。
業天:かもしれないですし、パートナーセールスがやっぱり多いので、どこかのパートナーでのセールスがどかっと来たとかかもしれません。
手嶋:8ページ目で、昨年度の売り上げが50億で、ARRだと45億。NRRのレート、彼らでいうと直販とパートナーセールスがあるんですけど、直販ルートは順調にアップセルできていて138%ですね。なので、新規顧客を取らなくても既存顧客だけで成長していくモデルになっていると。
彼らはクラウドモニタリング録画サービスという概念でシェアが47.5%だと自分たちで言っているんですけど、A社B社がどこか業天さんわかりますか?要するに業界2位3位の会社ということになりますが。
業天:ここはよくわからないんですよね。
手嶋:そもそも、たくさん事業者がいる領域なんですか?
業天:事業者はたくさんいますね。もともとハードディスクや専用モニターやカメラを製造していたメーカーがクラウド対応して参入しているパターンも何社かあるので。ただシェア47.5%と出ている通り、目立ったプレーヤーはやっぱりセーフィーですね。
手嶋:2位3位の顔が見えない感じなんですね。2位でも15.2%、3位で10.7%と、それなりにシェアあるんだけど、でもおそらくスタートアップではなく既存のカメラメーカーなんでしょうね、きっと。
業天:そうですね。スタートアップ系ではあまり思い浮かばないですよね。セーフィーと似たところは。
手嶋:9ページはビジネスモデルに触れています。彼らは自分たちのことを、クラウド映像プラットフォームを運営している会社だと。ハードウェアのスポット収益とクラウド上のソフトウェアサービスを提供して、リカーリング収益を得ているみたいなんですけど。この事業ドメインの定義については、業天さんはどう見ていますか。
業天:まさにな質問ですね。セーフィーはIoTだと分類されがちですが、もはやプラットフォームだなと。それがフォトシンスや弊社と違うポイントだなって思うので。セーフィーはカメラを自社で作っておらず、カメラのOSを作り、かつ、その上で動くサービスを作って各社に販売しています。デバイス開発が発生しないビジネスモデルなんです。
物を苦労して作っているStroboの立場からすると、事業的な効率の面に限れば本当に大きく異なるなと。そこにプラットフォーム感をすごく感じますね。
手嶋:自分たちでやるところとやらない部分の切り分け方がすごく美しい感じなんですかね。
業天:そうですね。
手嶋:ちなみに、IoTのスタートアップでカメラを自分たちで作ってないって不安になったりしないんですかね?そこはもうコモディティな領域だから、どんどん導入メーカーを入れ替えていけばいいやぐらいの感覚なのでしょうか。
業天:セーフィーは、本質的に自分たちがIoTの会社だとは思っていないんじゃないですかね。あまり接点がないのでわからないんですが、本当にクラウドの映像のプラットフォーマーであるだけで、IoTと呼ばれることもあるぐらいの気持ちなのかもしれないですね。
手嶋:先程、急にぐっとこの1年売り上げが増えていて、パートナー経由の販売が一気に伸びたんじゃないかという話がありましたけど。現時点では直販が40%で、パートナー企業がNTT東日本、セコム、キヤノンとそうそうたる企業ですよね。
業天:ここはすごいですよね。
手嶋:それぞれの会社でブランドを作ってやっているのかもしれないですが、これが60%ぐらい商流としてはあると。だからOEMで提供するパートナーもいれば、Safieブランドのまま販売しているパートナーもいるという感じですね。
僕が注目したいのは顧客で。基本法人のイメージだったんですけど、どれぐらいのパーセンテージかわからないものの個人にも販売しているのが図になっています。結構、個人も監視カメラのような用途で使っているんですかね。
業天:いやあ、ウォッチャーとして言わせてもらうと、セーフィーが提供してきたサブスクプランが2つあって、「Safie HOME」のすぐ後に「Safie PRO」が出たという順番。HOMEはたしか2019年にクローズしているんですよね。もうPROに絞りますと。そういう背景があるので、あまり個人顧客はいないんじゃないかなと思います。
手嶋:そうですよね。資料の図では個人と法人が同じ大きさで書かれているじゃないですか。そうするとマーケットがより広いのかなと一瞬思ったんですが、今後狙っていきたい意図があるかもしれませんが、現時点では法人顧客のシェアがかなり大きいはずですよね。
業天:ほとんど法人だと思います。
手嶋:自社が提供するサービスに対して、SaaSをもじった造語をさまざまな会社が作るんですけど。セーフィーの場合は「VDaaS」、Video & Data as a Serviceだと。なんと読むんでしょうね?
業天:ブイダースじゃないですか。
手嶋:ブイダースとしてIoTエコシステムを形成し、デジタルとリアルのプラットフォームとしてさまざまな現場にソリューションをと謳っています。市場規模でいくと、国内だけでも3000万台弱の市場があるのではないかかと。彼らはシェアを50%持っているので、そのシェアを維持するだけでも1500万台ぐらい取れるってことですよね。
これが本当だとすると。業天さん、これは感覚的にはどうでしょうか?今彼らの設置台数が13万台弱に対して、市場規模がこの数字だとすると、どういうところにカメラが付いてくのかみたいなイメージとかってありますか?
業天:ネットワークカメラと呼ばれるものは、ペット見守りカメラなども入ってると思うので、そういう意味では3000万台ぐらいあっても全然おかしくないですね。たとえば、コンビニって1店舗あたり何台ぐらいカメラが付いていると思いますか?
手嶋:それはいわゆる無人コンビニとかじゃなくて通常のコンビニってことですよね。3台とかですか。
業天:だいたい8~10台ついてるんですよ。
手嶋:そんなについてるんですね。
業天:カメラって、特に店舗などでは、死角が発生しないように狭い空間でも大量に使われるんです。事業者は何百万とあるので、盛りすぎだという感覚はないですね。
手嶋:なるほど。わかりました。セーフィーはIPOしましたけど、まだまだ伸びしろはあるぞと、一定の信憑性はあるのかなという感じですかね。続いて、17ページには彼らの製品のシリーズが載っています。このラインナップを見て、業天さんの感想はどうですか、現時点では。
業天:2つあります。やっぱりGOとかPocketシリーズのような、携帯回線を内蔵した持ち歩けるタイプのカメラが出てきたんですよね。工事現場の作業員が作業記録を取る際や、リアルタイムで指示を受ける際に使われているらしいんですけど。仕事上のコミュニケーションや業務改善に使われ始めてるのが、またサービスの幅が広がりそうだなという感じですね。
手嶋:こういった製品展開やパートナーセールスの状況を見ていると、BizDevが得意そうな感じが漂いますよね。
21ページでは、カメラの導入効果が載っています。ある飲食チェーンがSafieを導入して年間のコストが約4600万円から約1700万に減りましたと。各店舗に出張せずに遠隔でモニタリングができるようになったため、業務報告費や出張費が減ったと記載されています。ああ、そういうところを減らすイメージで提案してるのかと感じましたが、この点はどう思いますか?
業天:もう、なるほどという感じですね本当に。セーフィー自身、「クラウド防犯カメラ」とワーディングしていたりもするんですけど。防犯対策そのものは売り上げを伸ばす施策ではありませんが、コスト削減を謳いつつ、売り上げを伸ばせる側面もあると思うんですよね。モニタリングできる回数が増えるから、的確な指示ができて売り上げが改善しますよとか。防犯からズラして売上に紐づくところに提案できているのがすごいですよね。
手嶋:事業に直接的に役に立つってことですね、「PLに効くカメラ」というような感じの提案なんですねきっと。
業天:防犯の問題点を解決したらアップセルはできないけど、売り上げは無限にアップセルできるじゃないですか。
手嶋:防犯は安心感の提供と、いざとなったときの体制作りってことですよね。そういった観点で建設現場でも使われていますよという感じですね。